第2回 社会人特別講義 中川航先生(春秋社㈱)

今年は梅雨が長引いておりますね。日照時間が少なくて旬の青果類が高騰しているそうです‥!そんな中、春秋社の中川先生がいらして「音楽書をつくる」と言う講義テーマでお話しくださいました。 

中川先生が実際に編集に携わった書籍
春秋社は、人文書など様々な分野の本を取り扱っていますが、その中でも中川先生は音楽に関する書籍の編集に携わっています。

音楽に関する書籍にも、専門家や知識人向けの書籍なのか、一般人向けなのかによって方向性が異なります。

様々な読者を対象とする音楽書籍の編集を担当している中川先生は、どのようにして現在のお仕事に就かれたのでしょうか。

本大学 音楽学教授の村田先生の書籍!
先生は幼少期からピアノとヴァイオリンを習っており、レッスンやコンクールも受け、音楽大学への進学も考えていたそうです。ですが、演奏だけで食べていくのは難しいのではないかと考え、一浪して東京大学に入学されました。大学では、オーケストラサークルで打楽器に目覚め、現在も、趣味はピアノ、オーケストラで打楽器奏者として楽しまれているそうです。

一方学業では、音楽の哲学、歴史、文化史、社会史、音楽史、音楽理論、分析なども学ばれました。その中でも特に「音楽の演奏に関係のある部分に注目すること」だったそうです。

卒業論文では、「楽譜に一体何が書かれているのか」「楽譜とは何を読み取るものなのか」という疑問から、「(演奏速度に)数字を設定することで生じること」に絞って、メトロノームが初めて発明されたベートーヴェンの作品を用いて考察したそうです。また、修士論文では、そこから更にテンポについて掘り下げ、チェルニーが執筆したピアノ奏法理論に書かれた速度とテンポの考え方を読み解き、それまでの理論書とどう違うのか、チェルニーが主張しているメトロノームの速度の捉え方についてどう考えたらよいのか、を考察したそうです。

もっとチェルニーを知りたい!と進まれた博士課程で、先生は新たな世界に出会います。チェルニーの手紙や自筆譜などの資料を求めてウィーンに2年間留学したのですが、残された手紙等には、出版社との詳細なやり取りが残されており、チェルニーにとっての作曲活動は芸術活動ではなく、どちらかと言うと報酬(営業)目的だったのではないかと言う考えに至ったそうです。「芸術音楽家(演奏家)の音楽活動からは見えてこないものがあるのではないか」と持ち帰った膨大な資料をもとに、帰国後「19世紀の出版事情の実態調査」について研究なさることになります。

博士課程ではチェルニーを研究することに‥
それはつまり、音楽が大好きで、「音楽と演奏」にこだわり続けた中川先生が、ついに「音楽と出版」という新たな接点に辿り着いたと言うことではないでしょうか。その関係性に辿り着いたことで、先生の社会人としてのその後の人生も、音楽の世界も大きく広がったのだとわたしは感じました。

最後に先生は、「社会人」の定義についてお話しくださいました。

社会人とはいったい何でしょうか。一般的には、学生と社会人というように分けられているかもしれません。では、企業には就職せずに音楽家としてやっていこうとしている人は社会人でしょうか。また、学生は社会人ではないのでしょうか。学生の中にも、自分で学費を稼いで自活している人はいますが、彼らは社会人ではないのでしょうか。この定義は、そう単純な話ではないと思います。

「社会人」とは何ですか
ここで大切にして欲しいことは、【これからどういう風に大学の外と関わっていくのかを考えること】です。音楽大学に入ると、一見すると演奏・指導・レッスンなど、実技で生計を立てる道しかないイメージを持っているかもしれないけれど、必ずしもそうではない音楽との関わり方もたくさんあります。出版会社で音楽の本に携わるとか、ホールに就職するとか、演奏はしないけれど演奏家をサポートするなど、実技ではない形で音楽に関わる仕事はあります。そうした様々な関わり方・可能性があることを、皆さんにはぜひ知っておいてもらいたいと思っています。

先生はそう、締めくくっておられました。

中川先生は渡辺先生の教え子です

春期の講義が全て終わり、夏休みが始まりました!
秋学期は、9/16(月)からです!
皆さま、よい夏休みをお過ごしください! 

<お知らせ> 
夏休み中の8月4日(日)13:00-14:00 音楽文化教育専攻の入学説明会を行います。
受験を考えている学生、または、音楽文化教育って?と名前に興味を持った人、 
どなたでも大歓迎です! 
多くの人とお会いできたら思っています。 
♪お待ちしております♪ 

執筆者:事務助手 福本カナコ

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