第4回 社会人特別講義 石橋幹巳先生(独立行政法人 国立劇場)

!!明けましておめでとうございます!!

年が明けて、2020年になりました。今年は、いつもと違い、この!東京で!!オリンピック・パラリンピックが開催されます。わたしは既にわくわくドキドキしています。皆さんは、いかがしょうか‥?

浮足立ってもいられず、本研究室も、年度末ということで、イベントが目白押しです。ブログを通してどんどん発信してまいりますので、こうご期待です。まずは、昨年行われた第4回社会人特別講義の様子をお届けします!

11月13日(水)に国立劇場にて主催公演を始め、様々な邦楽の公演を制作していらっしゃる石橋さんをお迎えしてお話しを伺いました。

一つの公演を作るにも、予算作成、事業計画書作成、資金調達、協賛協力団体の獲得、会場の確保、監修者・脚本家・演出家・作曲家等の選出、公演実施にあたっての組織づくり、出演依頼、契約手続き、事業報告、メディア対応、公演記録作成、評価対応‥



公演の内容によって様々ですが、出演者には1~2年前には依頼し、台本作家や作曲家、舞台芸術家などには2~3年前の企画段階で依頼をするそうです。

広報宣伝をし、解説を書いてもらい、チケットを配券し、観客対応を依頼するなどの観客に見えるところで働いている「表方」がいる一方で、出演者に関わる人(衣装・小道具・ヘアメイク・楽器)、または、舞台に関わる人(大道具・照明・映像・運搬)で働いている「裏方」もいます。主催公演の担当者は、大勢の関係者を巻き込んで公演を作り上げています。

これらの作業を年に10公演ほどやっているそうです。全て同時進行のため、何が済んでいるのか、または済んでいないのかを把握するためにチャートを作成して仕事をすると仰っていました。同時進行のため、ひっきりなしに「あれってどうなってる?」と言う連絡がかかってくるそうです。携帯電話なしでは仕事はできないと笑っていました。そして、文句を言われれば、間を取り持つこともなさるので、精神は日々消耗しているそうです‥

「芝居はひとりでは何もできません。僕には役者として演技することも躍ることも、鬘をつくることも、衣裳を縫うことも、三味線を弾くこともできません。徹底的に素人です。歌舞伎の世界にはそれぞれのジャンルに徹底的なプロがいます。そのプロの人たちに、気持ちよく仕事をしてもらうプロになるということです。」(織田紘二「奥役という仕事」『なごみ』淡交社1994.12より引用)



石橋さんご自身も、「『この人が』何をしていてどういった立場で物事を考えているのかを把握する事が一つの勤め」と仰っていました。

今では仕事にやりがいを感じていらっしゃる石橋さんですが、学生の頃は何をするにもうまく行かず、もどかしい思いをしていたそうです。

水泳をしていたので水泳インストラクターになりたい!‥が、怪我をして水泳ができなくなり断念。実家稼業の土木建設業を継ぐ!‥が、社会情勢の変化で家業でも仕事がなくなってしまい、断念。青年海外協力隊として活動する!‥が、母が病気にかかり海外に行くことが困難になってしまい、断念。やりたい事が全てうまく行かず、大学3年次までで、自分がやりたい事が底を突いてしまいました

白紙になったところで、就職活動期間になり、今度は「できる事」を探し始めたそうです。人の営みを伝える仕事をしよう!と思い、新聞記者やマスコミ業界を受けましたが、受かりません。自分には能力など何も持っていないけれど、逆に能力を持った人々を人に紹介する(プロデューサー・編集者)ことは出来る!と言う発想に至りました。そして、ご縁があり現在のお仕事をなさっているそうです。



趣味程度に美術・音楽・舞台芸術鑑賞はしていたのですが、知識はまだまだ足りず、入社してからはひたすら勉強されたそうです。そもそも『現代の人が古典(江戸時代)を聴いて楽しいのか』と疑問に思ったことと、「自分は演奏もできない、作曲もできない徹底的な素人だし、造詣が深いわけでもない。けれども、そんな自分でも聴衆のことを考える事くらいはできるはず」と言う思いが重なったことがきっかけで、作品から聴衆ではなく、観客の立場に立った公演になるような工夫をしているそうです。例えば、音楽そのものだけではなく浮世絵や小説も一緒に紹介することで、初演時の感興が蘇るような工夫をしたり、谷崎潤一郎などの文豪が生きた時代に親しまれた邦楽作品を紹介する公演を制作したそうです。



最後に先生が仰った言葉が印象的だったのでその言葉を締めくくりに使いたいと思います。

「皆さんは、自分の夢や将来のことを考える時に、音楽がなかったら何をしたいのか、できるのかを考えたことがありますか。自分のやりたいことを音楽と言う言葉を用いずに伝えることができるのか。先生になりたいのであれば、生徒が成長する様子を見るのが喜ばしい、だから先生になりたい。演奏家になりたいのであれば、自分が表現することで人を感動させることができるから演奏家になりたい、など。音楽という形ではなく、自分が何をやりたいのか、考える機会があってもいいのではないかと思います。」



最後の社会人特別講義は、来週1月15日(水)に予定しています。現在高校で教えている卒業生2名をお迎えして、現場の声に耳を傾ける時間になりそうです。どんなお話しが聞けるのか、楽しみです!!

執筆者:事務助手 福本カナコ

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