第3回 社会人特別講義 津田正之先生

こんにちは!秋が深まってまいりました。皆さまは、どのような秋を満喫されていますでしょうか。わたしは専ら《食欲の秋》です!美味しいものを食べて、元気に冬に備えましょう♩

さて!今回は、

音楽科教育の目指すもの

と言う内容で、国立音楽大学教授の津田正之先生にご講義頂きました。




皆さんは、「人々が音楽を学ぶ意味とは何か」について考えたことがありますか。

カンボジアでの調査についてお話しくださいました!
津田先生は、北海道や東京で小学校の教諭を務められた後、琉球大学で楽しい音楽の授業づくり、米国に統治されていた沖縄の公教育の在り方について研究するなど、大変幅広く研究をなさっておられました。2010年からは、文部科学省の音楽担当の教科調査官として日本国内を回られ、学習指導要領の周知に努めるとともに、学校現場でどのような音楽科教育が施されているかを調査されたそうです。最近の大きなお仕事は、平成29年告示の学習指導要領の改訂に携わったことだそうです。また海外の音楽教育支援にも携わったご経験もあり、日本との教育環境の違いに驚きを隠せなかったと仰っていました。

 さて、皆さんは、恵まれた環境で学んでいる日本の子供たちが一番好きな科目はなんだと思いますか。

衝撃の調査結果で、どよめきが起きました
ベネッセ教育総合研究所が行った「第5回学習基本調査」の調査(2015)によると、日本の小学5年生に、好きな教科についてアンケートをとった結果、上位から家庭科(90.2%)、図工(86.5%)、体育(83.1%)と続き、外国語(英語)活動(77.6%)、理科(75.2%)、総合的学習(74.4%)、音楽(71.5%)、算数(68.4%)、国語(58.5%)、社会(55.6%)、だったそうです。家庭科から音楽は、体を動かしたり、作ったり、実験したりという『体験型の教科』と言えましょう。また、音楽が好きと肯定的に答える割合は、女子は約8割、男子は5割、男女の3割の差は、音楽特有の傾向のようです。

積極的に学生に語りかけてくださいました
なぜ「音楽」が体験型の教科のなかで最下位なうえに、男子の支持が低いという結果なのでしょうか。その理由について津田先生は、「本来は結果でなく、子供の音楽表現に対する思いや意図を大切にしながら作っていく『プロセスが大切』なのに、〈上手にできるかどうかを評価される授業〉になっている結果なのではないか」と仰っていました。



音楽は生活の役に立っているのでしょうか
また、学習指導要領実施状況調査(2015)では、「音楽の学習をすれば、普段の生活や社会に出て役に立つ」という質問に肯定的に答えているのは47.3%と、全ての教科等の中で最低であり、学校での音楽の学びが、生活や社会の中で生きているという実感が薄いことを表しています。また領域・分野では、音楽づくりの学習が好きと答えている子供が52.3%、指導内容について身に付けやすいと答えている教師が2割以下と、音楽作りについては、子供の情意面、教師の指導面に課題があることがわかってきたそうです。

 様々な教育現場を回って感じたことや、児童の学習状況を調査した結果を踏まえ、津田先生が音楽科教育で大切にしてきたこと、これからも大切にしてほしいことをまとめると、
〈主体的〉〈創造的〉〈協働的〉な音楽学習
となるそうです。音響として聴き映えのする音楽をつくるのなら、AIが勝る時代がきています。しかし、人間が音楽のよさを実感し、仲間と意見を通わせながら音楽表現をつくっていく過程そのものに、音楽を学ぶ意味があるのです。そのような学びを通して、学習指導要領で言う「生活や社会の中の音や音楽、音楽文化と豊かに関わる資質・能力」を育てていくこと。それこそが音楽科教育の目指すものではないでしょうか。そう、締めくくっておられました!

教師を目指す学生が相談していました
来週の10月19日(金)17:45より、第44回 音楽教育専攻の学内演奏会が行われます♪12組の学生がAホールにて演奏します。ご都合がつきましたら、ぜひぜひ足をお運びください!お待ちしております!!

執筆者:事務助手 福本カナコ

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