2017年9月27日水曜日

第4回 社会人特別講義 柴崎かがり先生




今回は、イギリスのハダースフィールド大学心理学部において、発達心理学と音楽心理学の研究と教育にあたっている柴崎かがり先生に、「日常生活における音楽の役割について探求する~心理学の視点から」というテーマで、講演して頂きました。






「音楽心理学」は、音楽や心理学のみならず、医学や薬学、社会学、教育学、哲学、人類学など様々な分野と関わり合いながら研究が進められている「interdisciplinary 学際的な」分野だそうです。例えば柴崎先生がなさっている研究の一つに、子どものジェンダーステレオタイプ(男女に関する固定観念)の発達過程に関する研究があるそうですが、この研究も、発達心理学だけでなく、社会心理学、教育心理学や比較文化心理学と、様々な視点を交えながら考察をするそうです。




では、音楽心理学では他にどんな研究があるのでしょうか。

柴崎先生は、病院やホスピス、高齢者施設や集中治療室などに演奏家を派遣してコンサートを行っているイギリスの“Music in Hospitals”(https://mihc.org.uk/about/)という団体と協力して、「医療における音楽の役割」について研究されているそうです。コンサートで音楽を聴いている人の表情や体の動きの変化を調べたり、唾液を採取して成分分析したりすることで、音楽の効果と役割について考察するそうです。

例えば、ある施設にいらしたリュウマチと認知症を同時に発症していたイギリス人の90代のご婦人は、その日は椅子に座ったままで、自発的に体を動かすこともないような状態だったそうです。ところがビデオのなかでは、演奏会が始まってしばらくすると、隣の人の手を握りしめながら笑顔で何か口ずさんでいました。重度の認知症のため言葉を使ってコミュニケーションをすることが難しいそうですが、「楽しかった・幸せだった」と話してくれたに違いないと思わせるような表情をしていました。

つまりこの場合、「音楽を聴くと、心理的、身体的にどういう変化が起こるのか」ということを調査しているわけです。

これまでの様々な先行研究から、

・気持ちが前向きになる
・手足の動きに変化が見られる
・コミュニケーション能力が向上する
・記憶を刺激する
・リラックスできる
・回想する
・痛みが軽減される

というようなことが特に認知症の方々にとっての音楽による心理的・身体的変化として示されているそうです。



一見当たり前のことの様に感じますが、柴崎先生は「音楽心理学の研究において、結果のみに目を向けるのではなく、どうしてそうなったのか、その過程について考えていくことが大切です」と、繰り返し仰っていました。






研究の現場では近年、イギリスでも研究成果の社会還元が強く望まれるようになり、例えば音楽が若者のアイデンティティの形成や発達にどのように影響しているのか調査し、研究結果を社会や地域で共有すると言ったお話しもありました。今まさに、日本で求められていることのように感じました。


海外の研究現場で活躍する方ならではのお話しに接することができるのは、この社会人特別講義の魅力のひとつです。次回は1025日(水)です!またご報告します!!

執筆者:事務助手 福本カナコ

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